現実へ沈む悲しみ

底なし沼に嵌って もがけばもがく程 あがけばあがく程 早く早く沈んでく 死期を悟り抗わず 停止をし続ければ 苦しみはより増し 時は遅く恐怖のみ 常に死に魅入られ 蝋燭を吹き消され あの世から遮られ 世間に追い出され ゆき場を無くして 辿り着くのだろう 辿り着けない処へ 何処から何処へ等 説明も想像も厭う 望まれない場所へ 辛く狭く寒い底へ 目指すしか出来ぬ 自分を笑ってくれ 底から見ててくれ 黙って待ってくれ 置き去りでもいい 招かないで欲しい 暗闇がやって来る

ヤドカリ

僕が浜辺を行けば 鋼鉄のような固い殻の中からは声がする それは遠い日の波音などではなく幻でもなく弱々しく それでも ハッキリと声は聞こえた 「いつも思ってた  あなたやあの人みたいに  もっとシンプルに  極めて純粋に  物事を感じ  誰かを信じられたら」 と 「こんな殻を  本当は脱ぎ捨てて  ありのままでいられたなら」 と それは 今までに僕が聞いてきたどんな言葉よりも 真意を纏っていた それでも 僕は出ておいでよとは言えない 現実は 余りにも残酷で 確実に望み通りになど生きられないから 殻から出る事が出来ない君を 更に奥に追い遣るように ただ指先で摘まんで振るんだ 殻から出るなんて無茶だ 殻から出たら生きられない 殻から殻へ逃げるんだ からから カラカラ

賞味、いい加減飽きた

小説家は 書くことに飽きることは出来ない 画家は 描くことに飽きることは出来ない 思想家は 思うことに飽きることは出来ない 歌手は 歌うことに飽きることは出来ない 私たちは 生きることに飽きることは出来ない

三猿

誰も見ていない 目を覆いたくなるような 現実を突き付けてみても 誰も聞いていない 耳を塞ぎたくなるような 現状を喚き叫びたてても 誰もが無視を決める 口を閉ざしたくなるような 現在を生き死ぬしかない様

スランプ

浮かばない 現実のせいだ 消えていく 誰のせいでもない 進まない 苛立ちだけが募り 今日もふける