制作

履け溜めにした覚えなんか無い 本当に 生きる事そのものが 芸術だもの 旅だもの 職業だもの 分別がつく大人になったとしても 作り続ける 評価はどうあれ 作る者で在り続ける 切り詰めると変わらない 独りよがりも称賛も 皆勝手なものだから 時と場合に振り回されるだけ 変わらない 作る事だけは それさえあれば それでいい

カウンセリング

私は精神異常者でしょうか? 極度に悲しみ喜び怒り浮き沈みが激しいです 多重人格ではありません 不確定要素が数え切れないだけなのです ただ 書き物読み物見る物聞く物全てに異常を求めます 本当は普通がどんな物か分かりません その癖いつも普遍を荒探ししています 愛と孤独の挟み撃ちでさ迷っています しかも 皆こんなもんだろうとか勝手に思っています これでも正常なつもりです 現に 認められたくて必死です あなたはそうではないのでしょうか? 他者の考えは読めません どうぞ ハッキリと 診断を下して下さい 私は精神異常者でしょうか?

よく分からない

望んでいる きっときっと 唯一無二の精神世界がある 立ち止まれば揺れている 歩道橋も屋上も僕も 佇んで空を見上げるだけ

ウソが木にとまっている 君が隣で微笑んでる 好きが終わってゆく 想いが始まってゆく 遠く遠い遠い 異国で時空で 今朝の景色を見渡す流星が降る 一つの灯りの下で 詩を描く人間の声を聞く者はおらず 淡い蒼の天井の静けさに唯溶けるだけ だってほら ウソが鳴いている 君が隣にいない 想いが終わっゆく 好きが始まってゆく 遠く遠い遠く ここは どこか

金遣いの天才

ある時ある場所に金遣いの天才と呼ばれる大富豪の息子がおりました 息子はありとあらゆる物事に金をふんだんに使う金遣いの荒い性格でした 生活必需品の全てには最低でも8カラット以上のダイヤをあしらいましたし 遊び場もドームから豪華客船にリゾートに別荘に島まで ありとあらゆる全てに至ってを買い貸し切り豪遊三昧でした 息子はこの世で自分に買えない物は無いと信じていました 彼は大人になるにつれて老いを恐れ始めたので 様々な長寿の人間と出会い老いない秘訣を大金を叩いて教わりました そして200年生きました 彼は時をも買ったのです そんな彼にも遂に死期が訪れようとした時 最後の最後にと彼は世界を買う事に挑戦しようと考えました しかし若い頃の面影がすっかりなくなって長く生き過ぎた彼は ずっと寝ついていた床から起き上がるだけでも億劫でした 召使に家の外へ自分を出すように銘じ広い城の様な豪邸から出ても その家の周りを100/1回りする事すら到底無理でした 家の壁に手をついて息も絶え絶えに一歩二歩と歩いていると前から小さな子供が走ってきました 子供は手に何かを持っていました 彼はその子供が手に持っている物を見て叫びました 世界だ! そしてそれを子供にいくら払ってもいいので売ってくれと頼みこみました すると驚いた事に子供はこう言いました 気に入ったのならあげるよ 彼はそれはそれはもう耳を疑い何度も無料でいいのかと子供に問質しました 何度訊いてもいいよと子供が笑顔で言うので彼はぐしゃぐしゃの泣き顔でそれを受け取りました 子供がそれを渡して去った後彼は満足そうな心底安らいだ顔でその場で息を引き取りました 家の前で小さな地球儀形の鉛筆削りを持って亡くなった彼のニュースは世界を騒然とさせました しかし彼が何故こんなにも穏やかな顔で死んでいたのかは誰にも解りませんでした 金遣いの天才が最期に残した言葉は最初で最後の無償へのありがとうでした